980101056
有
1379
[正月特集5]映画・演劇・音楽ガイド 演劇(その1) 歌舞伎座・明治座ほか
◇片岡仁左衛門、襲名披露
■歌舞伎座
今年の演劇界年頭の話題は1、2月歌舞伎座の「十五代目片岡仁左衛門襲名披露興行」だろう。新仁左衛門は前名の孝夫で歌舞伎のみならず、映画、テレビでも活躍している人気俳優。「今世紀最後の大きな襲名披露」との松竹の言葉通りの豪華な顔合わせでのお披露目となった。
まず1月。昼の部で仁左衛門は「口上」と「寺子屋」の松王丸に出演。女房の千代が芝翫、源蔵が吉右衛門、戸浪が菊五郎。さらに園生の前に雀右衛門、よだれくりに勘九郎まで出演する襲名ならではの豪華な顔合わせだ。夜の部が父の十三代目も得意とした「廓文章」の伊左衛門。夕霧は雀右衛門で、もちつきの場面や正月の飾り物が舞台を彩る1月にふさわしい華やかな狂言。劇中に口上もある。
2月の昼の部は「熊谷陣屋」の直実。妻の相模が雀右衛門、藤の方に玉三郎、義経に団十郎、弥陀六に羽左衛門。仁左衛門の義太夫狂言での武士ぶりを楽しめる。夜の部が「口上」と「助六」。相手役の揚巻は玉三郎。孝玉と呼ばれた人気コンビの復活だ。
◇待望の再登場
■明治座
明治座で3、4月の2カ月、「近松心中物語」が上演される。秋元松代脚本、蜷川幸雄演出の人気大作で、一昨年の初演のキャストを一新しての再演が、大評判となった。待望の再登場となる。坂東八十助の忠兵衛、寺島しのぶのお亀は変わらず、新たに梅川に高橋恵子、与兵衛に大石継太が加わる。
同劇場では1月が五木ひろし特別公演「京模様、夢かうつつか」。俳優としても定評のある五木が近松門左衛門の「帯屋」でも有名な親子ほど年の差のある男女の恋を描いた「おはん長右衛門」に挑戦。もちろん歌の「ビッグショー」もつく。
2月が有吉佐和子のベストセラー小説を原作とした「出雲の阿国」(大薮郁子脚本)。歌舞伎踊りの創始者といわれる阿国を杜けあきが演じる。共演は田村亮、手塚理美ら。5月が坂本冬美、6月が里見浩太朗、7月が松平健、8月が杉良太郎と人気俳優が次々と登場する。
◇山本富士子ら登場
■新橋演舞場
山本富士子が登場するのが新橋演舞場1月公演。吉川英治原作、田中喜三脚本の「吉野太夫の恋」と舞踊「初春の寿ぎ」の2本立て。吉野太夫に恋をする刀鍛冶(かじ)の弟子に大河ドラマ「毛利元就」に主演した中村橋之助、太夫を身請けしようとする灰屋三郎兵衛に中村信二郎と歌舞伎界から花形俳優2人が参加する。
2月が昨年上演した「浅草慕情」の再演、「浅草パラダイス」(金子成人作、久世光彦演出)。中村勘九郎、藤山直美、柄本明、波乃久里子らの初演メンバーに吉田日出子が加わる。4、5月には市川猿之助のスーパー歌舞伎「オグリ」が再演される。
◇若手初春歌舞伎など
■その他
松竹では1月に浅草公会堂で若手による初春花形歌舞伎を公演。坂東八十助の「河内山」、尾上辰之助、尾上菊之助、市川新之助の三之助による「勘進帳」などが上演される。4月25日から5月17日まではサンシャイン劇場で松本幸四郎のサリエリ、市川染五郎のモーツァルトの配役で「アマデウス」を再演。9月にはシアターコクーンでコクーン歌舞伎を上演。中村勘九郎、中村福助、中村橋之助が出演する。
■写真説明 新仁左衛門の伊左衛門襲名披露片岡仁左衛門
■写真説明 「近松心中物語」の坂東八十助(左)と高橋恵子
■写真説明 「出雲の阿国」の杜けあき
980101236
無
361
BS・CS放送 番組ガイド ステージ 【大阪】
◆NHK衛星第2
1日に宝塚雪組公演「LET JAZZ〜踊る五線譜〜」(後3・10)を放送する。ジャズの魅力が華やかなステージから伝わってくるはずだ。轟悠、香寿たつきらの出演。
2日の「お茶の間初芝居」は歌舞伎の舞台中継(後0・15)。
十五代片岡仁左衛門を襲名する片岡孝夫の襲名披露公演の模様を東京・歌舞伎座から生中継。午後4時まで熱気あふれる舞台をたっぷりと楽しむことができそうで、歌舞伎ファンには見逃せない。
◆WOWWOW
3日に「古舘伊知郎 TALKING BLUES 10th」(後2・0)を放送する。トークショーでも、芝居でもない。2時間あまりを言葉で埋め尽くす。古舘だけがつくり出せる独特のライブ。内容は見てのお楽しみ。
980107245
有
1182
[この人と]十五代目を襲名・片岡仁左衛門さん/3 夢のような襲名興行
▼青年期を過ごされたころ、関西歌舞伎は不振でした。
−−俳優をやめようと考えたこともありました。関西で芝居が開かない。本当に食べていけないと思ったからね。当時は西と東に歌舞伎が完全に分かれていましたから、今のように東京へ簡単に出られる状況じゃない。飲食店をやろうかとか身の振り方をいろいろ思案しました。
▼10代の末に上京されました。
−−仕事を求めてやって来ただけ。ひと花咲かせようなんて考えは、まったくなかった。
▼関西では「義賢最期(よしかたさいご)」の義賢や「女殺油地獄」の与兵衛などで若手として注目されていました。
−−それも東京では全然通用しませんでした。一からのスタート。端でも何でもとにかく舞台に立ってお給料をいただく。板(舞台)の上に立てるだけでうれしかった。そうこうするうちに東横ホールで時々いいお役を頂戴(ちょうだい)できるようになりました。
▼そして1971年に新橋演舞場で若手中心の花形歌舞伎がスタートします。守田勘弥さんを上置きに今の団十郎(当時海老蔵)さん、玉三郎さんらがメンバー。仁左衛門さんは「実盛物語(さねもりものがたり)」の実盛や「桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)」の権助など現在までの当たり役を次々と手掛けられた。
−−運が良かったんですよ。あの一座に参加していなかったら恐らく今の自分はなかった。
▼東横ホール出演当時は三之助(現団十郎、菊五郎、初代辰之助)さんが人気でした。ポスターの写真にしても3人に比べると扱いがずっと小さかったそうですね。
−−それが演舞場では当時の海老蔵さんと同じような扱いになったわけだからね。うれしかった。また、そのころを思えば、今度の襲名興行にあれだけの皆さんが付き合ってくださるなんて夢のようです。
▼演舞場の改築で花形歌舞伎は79年に終了します。
−−働く場所がなくなると思いました。演舞場ではいい役をさせていただいても歌舞伎座には出してもらえないという状況が続いていた。もう今後は主役は回ってこないだろう。だったら、いいわき役に徹しようと思い定めていました。
▼ところが80年。歌舞伎座で当時の花形俳優が勢ぞろいした「仮名手本忠臣蔵」の通し上演があり、仁左衛門さんは由良之助と平右衛門を幸四郎(当時染五郎)さんと交代で演じられた。観客の一人としても印象に残る興行でした。
−−あれは大きかった。歌舞伎座で主役は無理だろうと思っていましたから。歌舞伎座で出し物(主役)ができるようになったのは忠臣蔵以降です。僕には三つの大きな節目がある。一つ目が大阪の父の自主公演の仁左衛門歌舞伎で「女殺油地獄」や「義賢最期」をして評判をいただいたこと。もう一つが新橋演舞場の花形歌舞伎の出演。三つ目がこのダブルキャストでの忠臣蔵出演でした。 (つづく)
<聞き手・小玉祥子/写真・塩入正夫>
980107298
有
1111
[花のひと]孝夫から仁左衛門へ/9 襲名披露「手が震えた」 【大阪】
孝夫の十五代目片岡仁左衛門襲名披露興行が今月2日、東京・歌舞伎座で開幕した。今回、半生記はひとまずおき、孝夫がおおやけに「仁左衛門」となった初日の様子をルポしてみよう。
仁左衛門家の年末年始には独特の風習がある。まず「年越しそば」は「名上げそば」と言う。中に揚げが入っており、興行の初日と千秋楽にも食べる習わしだ。1日未明、初もうでに行った後、朝になるまで寝るが、これも「寝る」とは言わず「稲を積む」と言う。
正月早々「寝る」なんて不謹慎、という理由からだ。雑煮も独特だ。元日はカシライモ、丸モチなどを入れた白みそ仕立ての京都風。
2日はカシライモを抜いた白みそ仕立ての大阪風。3日はキリモチを入れたすましで東京風。代々、京都・大坂・江戸の三都で活躍する役者になることが、家訓となっているからである。
いよいよ初日の2日。午前8時半に起床。いつものように仏壇に灯明を上げる。
「さすがにこの時、340年続いてきた名前に新しい一ページを付け加える責任を感じました。わずか一ページだけどね。その重さを感じました」(孝夫)
午前11時43分、歌舞伎座の楽屋入り。昨秋からドキュメントを取材中のテレビ局カメラマン2人も、楽屋に張りつく。楽屋は1階奥、16畳と4畳半の2間続きである。すぐに歌舞伎座支配人の大沼信之らがあいさつに。歌舞伎の初日は忙しい。役者同士、互いの楽屋へあいさつに回るのである。孝夫の部屋へは市村羽左衛門らが次々に顔を出す。孝夫の出番は口上から。きょうは特別に、父(十三代目)の鏡台で化粧をする。口上は予定より10分余り遅れ午後1時38分に開幕。孝夫の番になると、拍手が鳴りやまない。
「芸道に精進いたしますゆえ……」
その後すぐに「寺子屋」が開幕するので急いで松王丸のこしらえに。無事に終わり、昼夜の幕あいにはスポーツ紙など数社が楽屋で取材。京都の舞妓らごひいきも次々に。午後4時過ぎに食事。夜の部は2番目の「吉田屋」に出る。上方歌舞伎の代表的狂言だ。午後8時前に終わり、楽屋ぶろへ。上がってやっと一息つく。
「きょうは緊張したね。口上でね。拍手がやまないんで『さて』と大きな声出したら、次の瞬間、言うことを忘れてしもた(笑い)。床についてる手がカタカタと震えた(笑い)」
テレビ2局の取材後、午後9時23分、歌舞伎座を後にした。襲名披露は4、5月が大阪松竹座、10月が名古屋・御園座、12月が京都・南座と続く。
(水曜夕刊に連載)=敬称略
【宮辻政夫】
980108287
無
200
親と子の歌舞伎鑑賞会−−1月25日、歌舞伎座で
◇親と子の歌舞伎鑑賞会
1月25日(日)歌舞伎座昼の部(11時開演「寿曽我対面」「京鹿子娘道成寺」「口上」「寺子屋」)の3階席を親と子(18歳未満)の組み合わせに限り、1人3500円(通常6300円)で提供する。希望者は往復はがきに〒住所、氏名、年齢、電話番号、枚数を記入、1月12日までに〒104―77中央区銀座5の1の7、都民劇場「親と子の歌舞伎」係へ。問い合わせは03・3572・4311へ。
980109262
無
741
[らんだむ批評]「十五代目」と呼ばれる日
「橘屋細い幹でも十五代」とは、十五代目市村羽左衛門が自らをよんだ句である。美ぼうで細身、声のよく通る人気歌舞伎俳優で、「十五代目」は美男の代名詞であった。亡くなったのは1945年で70歳の時。彼は俳優としての人生を二枚目で終始した。
二枚目の立役歌舞伎俳優の昭和期における代表格としては戦前の十五代目羽左衛門、戦後の十一代目市川団十郎が挙げられる。そして今年。東京・歌舞伎座でやはり十五代目を名乗る歌舞伎俳優が誕生した。新・仁左衛門である。
羽左衛門が得意としたのは「伊勢音頭」の福岡貢、「実盛物語」の実盛、「切られ与三」の与三郎、「助六」……。
新・仁左衛門も「顔、声、姿」の三拍子がそろう十五代目羽左衛門、十一代目団十郎の系譜に連なる俳優として早くから期待されていた。
だが、片岡家は名門とはいえ、新・仁左衛門が青春期を過ごしたころ関西歌舞伎自体が衰運。上京しても後ろ盾はない。人気に火がついたのは新橋演舞場でスタートした花形歌舞伎でだった。興行側の起用より、人気の方が先行していた。
演劇評論家の水落潔氏は孝夫(新・仁左衛門)の魅力として「さわやかさ、清潔さ、スマートさ」を挙げ、関西出身の孝夫にあるのは「すべて、江戸歌舞伎の立役の魅力なのである」と著書の「平成歌舞伎俳優論」で分析している。
東京の観客の多くも同様の感触を持った。期待に応えて孝夫は上方狂言に加えて「助六」の助六、「十六夜清心」の清心、「御所五郎蔵」の五郎蔵と十五代目の江戸狂言の当たり役を次々と演じ、成果を上げていった。
そして今回の襲名。同じ十五代目を継ぐことに因縁めいたものすら感じる。羽左衛門と同義語になっていた「十五代目」が仁左衛門とイコールになる日が果たして来るのか。楽しみなことである。(D)
980114302
無
302
「ひなの一ふし」公演 蝦夷下北編−−国立劇場の特別企画公演
国立劇場の特別企画公演として17、18の両日、「ひなの一ふし・ひなの遊び2」が上演される。
江戸時代後期の国学者・旅行家の菅江真澄(1754〜1829年)の残した紀行文に、作曲家の間宮芳生が節付けし、現代の浄瑠璃「菅江本奥じょうるり」としてよみがえらせた。前回の特別公演で道奥編が上演され、今回は蝦夷下北編の「しほひかり」が公演される。間宮の台本・作曲、田村博巳の構成・演出。
特別出演の民俗芸能は北海道白老と青森県下北半島から。アイヌの芸能は、「カムイユカラ(神謡)」、「ムックリ(口琴)」など。下北からは勇壮な獅子の「権現舞」、女性だけの「田植え餠つき踊り」。問い合わせは03・3265・7411。
980127257
無
534
[クリントン疑惑]「性的関係」の定義めぐり論議
【ワシントン26日高畑昭男】クリントン米大統領は26日、ホワイトハウス元実習生、モニカ・ルインスキさん(24)との「性的関係」を改めて否定したが、ルインスキさんは捜査当局に押収された告白テープの中で、十数回にわたりオーラル・セックスを行ったと語っているとされ、「性的関係」の定義をめぐって論議を呼んでいる。
米司法関係筋によると、オーラル・セックスを単なる「性行為」ととらえるか「性的関係」と位置づけるかは異論があるが、大統領は聖書の教義や法解釈などをもとに「オーラル・セックスは不倫にあたらない」と主張しているとされ、2人の関係の具体的内容が今後の争点の一つとなる可能性もある。
ルインスキさんは大統領がほかに4人の女性と関係を持っていることを知って「裏切られた」と思い、告白に及んだという。しかし、告白テープを聞いた関係筋の話として米メディアが伝えたところによると、彼女はこれ以外の肉体関係について具体的に言及せず、大統領執務室に近い部屋などでオーラル・セックスを繰り返したり、深夜に大統領とテレホン・セックスをしたなどと説明している。
このため、同日のマカリー報道官の定例会見では「大統領の言う性的関係に性交以外の行為は含まれるか」などと露骨な質問が相次いだ。
980129100
有
1156
[今週のなるほど博士]「特別出演」の意味 役者の格などに配慮して
◇なぜ
映画やテレビドラマを見ていると、出演者で「特別出演」や「友情出演」という俳優さんがいますが、どう違うのでしょうか。=東京都三鷹市、津野義博さん(34)
◇役者の格などに配慮して「友情出演」は、人間関係中心に考えて決める
テレビドラマなどの「特別出演」「友情出演」について、日本テレビに聞きました。
まずは「特別出演」について。同ランクの役者さんが何人か、同じ番組に出た場合、脚本の中では当然、役の重要順で1番、2番が決まってきます。役の上ではそうであっても、役者さんの格で1番、2番が決められない場合、「本の中では、あなたはわきですが、その代わりテロップ上は特別の図らいをするので、何とか出演を」というのが、一般的に多い「特別出演」のケースです。
また、本来ならこの手の役はもったいなくてやらない大御所が、「特別という肩書がついているなら」という場合もあります。もちろん、出演料などで特別がついているケースもあります。
現在、日本テレビで放映中の「三姉妹探偵団」では、高田純次さんが特別出演です。高田さんの役は、1話で行方不明になり、2話以降も、どこかあてもないところにいて、いつ日本に帰ってくるのか分からない(脚本の中にいつかかわってくるのか分からない)という設定です。
普通、高田さんクラスですと、ドラマの中に組み込んでいなければなりませんが、今回のドラマでは1話で行方不明になり、原作では、そのラストに戻って来るものの、ドラマのアレンジとして最終回近くまで行方不明のまま帰って来ない話にしています。そのため、ドラマの中では、1シーンか2シーンしか出てきませんが、どうしても高田さんに出演してほしかったので、番組としての配慮から特別をつけました。
「特別」と「友情」との使い分けは、一般的には出演料であったり役者さんのランクであったりします。「特別な扱いでなら」とか、本当に友情があって、それが役者さん同士の友情であったり、スタッフ側への友情であったりして出演してもらうケースもあります。
ところで、ドラマは通常、脚本があってキャストを選ぶか、キャストが決まっていて脚本を作るかのどちらかです。今回は、出演も原作も決まっていないもやもや状態の中で、今一番旬の鈴木蘭々さん、吉川ひなのさん、野村佑香さん3人で「三姉妹探偵団」をやったら面白いのではと、動き出したのが始まりでした。3人の意外な面が出て、起用は成功でした。
× × ×
「今週のなるほど博士」に質問をお寄せ下さい。専門家が紙面で回答します。〒住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記して、〒100―51毎日新聞社生活家庭部「今週のなるほど博士」係へ。匿名も可。採用分には薄謝を送ります。
■写真説明 日本テレビ「三姉妹探偵団」の1シーン
980204399
無
198
親と子の歌舞伎鑑賞会−−2月22日、歌舞伎座
◇親と子の歌舞伎鑑賞会
2月22日(日)歌舞伎座昼の部(11時開演「春調娘七種」「女暫」「熊谷陣屋」「吉野山」)の3階席を親と子(18歳未満)の組み合わせに限り、1人3500円(通常6300円)で提供する。希望者は往復はがきに〒住所、氏名、年齢、電話番号、枚数を記入、2月9日までに〒104―0061中央区銀座5の1の7、都民劇場「親と子の歌舞伎」係へ。問い合わせは03・3572・4311へ。
980206302
無
730
[らんだむ批評]悪くなかった貸館公演
東京宝塚劇場の取り壊し工事が、1月末に始まった。1934年に開場した由緒正しい大劇場も壊すとなるとあっという間。日比谷周辺の景色も大きく変わることだろう。
同劇場の本興行は昨年12月26日までの宝塚花組公演で終了。引き続き、歌劇団OGと現役生徒によるファイナルショーが27日から3日間行われた。公式公演はこれで終わりだが、この後、12月31日から1月18日まで貸館興行があった。「ジャニーズ事務所」の公演である。
同事務所は人気タレントを多く抱えていることで知られ、この公演にも近藤真彦、少年隊、TOKIO、KinKi Kids、V6らが出演した。
千秋楽の1月18日。その人気者が勢ぞろいするとあって寒い雨の日にもかかわらず、大にぎわいだった。ショーが始まるや、ペンライトが振られるわ、耳がおかしくなりそうな掛け声は飛ぶわの熱狂ぶりで、先を案じているとこれが大違い。なかなかに統制が取れているのである。
最初にタレントから「みんな立ち上がらないで見てね」のスピーチがあったせいか、いすの上に立ったりするような迷惑者はいない。自分のお目当てではないタレントにもすべき時には拍手を送る。素直にステージを楽しんでいる。
最後に出演者と祖母と孫ほどの年の開きのあるゲストの森光子が劇場の思い出を語った。戦争で閉鎖されたこと、敗戦と同時に進駐軍用の専用劇場「アーニーパイル」になったこと。「戦争はみんなが楽しむ物を一番先に奪っていく」。そんな話にも静かに耳を傾けている。良質な観客である。
劇場が宝塚公演で終了しないことへの歌劇団ファンからの不満の声もあったと聞く。しかし、この貸館公演、悪いものではなかった。劇場に心があるとしたら、きっと怒っていないと思う。(D)
980206308
有
749
[フレッシュ]中村獅童さん<「浅草パラダイス」に出演中の歌舞伎俳優>
◇今、引き出し増やす時
身長176・5センチ。1995年には歌手としてCDデビュー。日大芸術学部演劇学科に在学し、ファッションショーにモデルで出演した経験もある。現在売り出し中の歌舞伎俳優だ。
名女形三代目中村時蔵の孫。四代目時蔵、萬屋錦之介のおいで、中村歌六、現・時蔵、歌昇、信二郎は従兄。三代目時蔵の兄が初代中村吉右衛門、弟が十七代目中村勘三郎だから、多くの歌舞伎俳優が親類になる。
「父は歌舞伎界から離れているので、僕が無理に歌舞伎の道に進む必要はなかった。祖母に連れられて芝居をよく見にいき、子供心にかっこいいと思っていたから、自分で『お化粧して舞台に出たい』と言い出しました」。81年、8歳の時に「妹背山婦女庭訓・御殿」で、勘三郎の豆腐買いに手を引かれて初舞台を踏んだ。
「自分がまだよく分からないので、今はとにかく時代物をしっかりと勉強したい」と話すが、着実な歩みを続けている。1月は大阪松竹座で坂東玉三郎主演の「阿古屋」で榛沢六郎役。すっきりとした武将ぶりが光った。
昨年の大河ドラマ「毛利元就」には尼子義久役で出演。「獅童さんの名を劇場のポスターに見付け、初めて歌舞伎を見ました」というファンレターが若い女性からきた。「うれしかったです」
そして2月。新橋演舞場「浅草パラダイス」に興行師、大山錦吾役で出演中だ。昨年の同時期に上演された「浅草慕情」の改作。「小さいころ母に連れられて見にいった『上海バンスキング』の主演女優、吉田日出子さんと同じ舞台に出させていただけるのは、不思議な気がします。プレッシャーもありますが、勘九郎のお兄さんには『かたくなるな』と言われました。芸の引き出しにたくさんの物を詰め込んで、年を重ねた時に自分のものとして出てくればと思っています」【小玉祥子】
980214283
有
527
つかこうへい演劇、韓国上演へ−−14年ぶり、在日テーマ
大分市つかこうへい劇団が来年3月に計画している「売春捜査官」の韓国公演で、韓国文化体育部(日本の文部省)の諮問機関「公演倫理委員会」は13日、19歳未満の観劇を禁止する条件付きで上演を許可した。これを受けて大分市は同部に公演許可を申請する。13年前のソウル公演で自作の書き換えをしいられた経験のあるつかさんは「今回も覚悟していたが」と、半ば驚きながら歓迎している。
市によると、韓国では日本語劇の上演や日本人の出演は倫理委と同部の許可が必要で、市は1月21日に倫理委へ翻訳した台本を提出していた。「売春捜査官」は在日者や女性、同性愛者らに対する差別がテーマ。計画ではソウル、釜山両市で、韓国人俳優による韓国語版と大分つか劇団員による日本語版を上演する。
つかさんは「韓国公演は両親の生まれた国への恩返しとして実現させたかった。日帝支配の歴史や戦後の日韓関係を考えると、すんなりいかないと思っていたが、金大中(キムデジュン)さんが大統領になることだし、日本の大衆文化を受け入れる方向にあるのだろう」。また木下敬之助・大分市長は「地方からの文化発信が韓国との新時代を開くきっかけになることは喜ばしい」と話している。【柳原美砂子】
■写真説明 つかこうへいさん
980216138
有
220
[雑記帳]少年歌舞伎−−山形・酒田
◇山形県酒田市黒森地区に江戸時代中期から伝わる黒森歌舞伎が15日上演され、小学生だけが出演する「少年歌舞伎」が披露された=写真。
◇観客の減少に歯止めをかけ、後継者を育てるのが狙いで、初めての試み。会場の神社の境内を埋めた観客は地元の小学5、6年生の男子児童19人が浴衣姿などで演じる「白浪五人男」に拍手喝さい。
◇6年生の1人は「セリフの上げ下げもうまくいった。最高の気分」と学芸会とは一味違う伝統芸能の魅力を実感していた。【鬼山親芳】
980228145
有
1133
[特集]地域の活性化 個性化が築く21世紀(その5止) 北区つかこうへい劇団
ハコ物としての劇場は作るけど、後は知らんぷり。そんな自治体が多い中で北区は「ソフトを充実させよう」と自前の劇団を作ってしまった。発足して約4年間に五つの劇を上演し、地方公演をこなすまでに成長した。
北区つかこうへい劇団。区内に住む劇作家で演出家のつかさんと区の文化担当者の雑談がきっかけだった。「若い人に活躍の場を与えるような演劇の舞台がほしい」というつかさんの希望を区が受けて、半年余りで話がまとまった。
劇団は役者のタマゴを育てる養成所でもある。1994年3月の第1回オーディションには1097人も押し掛けた。大学生のほか、「自己実現」を夢見る女性会社員、サラリーマン、70代のお年寄りと多彩な顔ぶれが集まった。
2次にわたって、ダンスとせりふのテストが行われた。男性の応募者は、踊ったことがない人がほとんどだったが、テストを通じて天性のリズム感を見出された人もいた。この時に選ばれた15人が第一期生。また戯曲演出家コースには、オリジナル作品で応募した中から7人が合格した。
合格者は、ほとんど演じた経験のない若者たち。あるのは熱気とやる気だけだ。養成コースでの半年間、週4回計5時間ずつ発声や演技の練習を続け、何とかさまになってきた。95年9月の第1回目公演「つか版・北区お笑い忠臣蔵」を観た客から「一生懸命が伝わってくる」と励ましの声が多く寄せられた。
劇団マネージャー、勝田博さんは区からの出向。勝田さんが手応えを感じ始めたのは96年4月の第2回公演「寝取られ宗介」から。秋に再演となった。翌年の2月公演もあたった。つかさんが同性愛の男性たちを描いた「ロマンス」は、当日券売り場に100人も並んだ。何回も続けて観に来る人もいて、「顔を覚えてしまった」と笑う。名古屋・福岡・大阪など初の地方公演も実現した。
区は劇団に毎年5000万円を出資。けいこ場も提供し、公演の度に出演料を役者たちに払う。公演は毎回、黒字にはほど遠い。2000円という安い料金のせいだ。
だが「演劇のすそ野を広げるためは若い人に観てほしい」というつかさんの希望から、今後も値上げはしない方針だ。
練習についていけなかったり、能力に限界を感じたりといった理由で劇団を去る人も多い。現在残っている役者は21人、戯曲演出家も21人。区文化振興財団は「地元の高校演劇部と連携するなどもっと地域と密着していきたい。これからはソフトの時代なので、北区から全国に発信できるものを作りたい」と意欲的だ。次の公演は4月3〜14日に、北区王子1の北とぴあで開かれる「サイコパス」だ。
■写真説明 公演「ロマンス」より=北区つかこうへい劇団提供
■写真説明 指揮を執るつかこうへいさん=北区つかこうへい劇団提供
980406256
無
196
親と子の歌舞伎鑑賞会
26日(日)歌舞伎座昼の部(11時開演「矢の根」「本朝廿四孝・十種香」「須磨の写絵」「西郷と豚姫」)の3階席を親と子(18歳未満)の組み合わせに限り、1人2400円(通常4200円)で提供する。希望者は往復はがきに、郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号、枚数を記入、14日までに〒104―0061中央区銀座5の1の7、都民劇場「親と子の歌舞伎」係へ。問い合わせは03・3572・4311へ。
980408334
有
1033
[花のひと]孝夫から仁左衛門へ/21 その2止 歌舞伎座への道開く 【大阪】
新橋演舞場の花形歌舞伎のころ、現仁左衛門は義太夫節を使った古典(義太夫狂言)での演技では、すでに東京でも定評を得ていた。それに加えて、江戸の匂いの漂う生世話と呼ばれる芝居も、このころから本格的に演じ、認められ始めた。「桜姫東文章」の権助もそうだし、「お染の七役」の鬼門喜兵衛、「盟三五大切」の三五郎などである。
さらに、自他ともに苦手と思っていた、柔らか味や色気の必要な上方和事に挑戦。大役「吉田屋」の伊左衛門を72年夏の地方公演で初演した。これは家の芸である。8月、ちょうど南座に出演中だったので京都・嵯峨の実家で、父の十三代目が細かく教えた。だが「手も足も出ない。しかも前で眼鏡をかけて教えている人は父ではなく、伊左衛門そのものになっている。芸の力の恐ろしさをまざまざと見せつけられた」(現仁左衛門)。
十三代目は当時68歳だったが、東京や九州の公演先にまで教えに来てくれた。それでもうまく出来ず、初日前夜は明け方まで眠れなかったという。しかし結果は好評で、この伊左衛門を神戸で見た演劇評論家、藤井康雄は「若さがにおうばかりの和事ぶり。なかなかの伊左衛門だった」とほめている。
現仁左衛門は江戸・上方の味わいともに身につけてきたのである。しかし新橋演舞場は建て替えのため79年8月公演を最後に閉館。青春の火を燃やした花形歌舞伎は終わった。
「もう大役は出来ないだろう」
新橋演舞場では主役がついたが東京・歌舞伎座では同世代より格下の扱いだった。関西出身のハンディはまだつきまとっていた。そこで「あの役は孝夫に頼まなければだめだ、と言われるようなすばらしいわき役になろう、と思った」。決して、いやいや、わき役になろうと思ったのではない。
しかし1年後の80年3月、歌舞伎座の花形歌舞伎「忠臣蔵」に出演するチャンスがやってきた。市川染五郎(現松本幸四郎)とダブルキャストで由良之助など3役を演じることになったのだ。11年ぶりの由良之助。東京ではもう二度と出来ない、とあきらめていた役だけに、うれしかった。ところが、また一悶着起こった。
染五郎と同格であることに、反対の声が出たのである。今から見ればヘンだが、当時はまだそういう意見があった。しかし、一方には現仁左衛門を強く推す意見もあり、結局、当初企画通りに決着した。現仁左衛門にいよいよ歌舞伎座で主演する道が開けてきた。(水曜夕刊に連載)=敬称略【宮辻政夫】
980409320
無
312
「盟三五大切」を上演−−青年座が埼玉で
11、12の両日、埼玉県与野市の彩の国さいたま芸術劇場で、青年座が「盟三五大切」(鶴屋南北原作、石沢秀二台本・演出)を上演する。
「盟三五大切」は1825年に初演。「忠臣蔵」のいわば裏世界を描いたもので、金の魔力を軸として忠義と愛と裏切りのかっとうが展開し、あまりに陰惨なドラマのため、初演以来、歌舞伎で上演されなかった。69年に石沢演出で青年座が上演してから、映画化されたり、歌舞伎で上演されるようになった。
青年座は、この作品を持って、モスクワ芸術座創立100周年記念・チェーホフ国際演劇フェスティバルに参加、さらに西シベリアのオムスク公演を行う。海外公演に先駆けての上演となる。問い合わせは048・858・5503。
980410302
有
845
[このごろ通信]松井今朝子さん(作家) 歴史のうねりに触れたい
「芸能界というものを描きたかった。そこには人間の生と死を凝縮したような光景があるように思うんです」
第8回時代小説大賞を受賞した『仲蔵狂乱』(講談社)が好評だ。3歳で両親を失い、どん底の生活から千両役者になった歌舞伎俳優、中村仲蔵の生涯をたどった約500枚の長編。田沼意次の治世による“バブル”が崩れていく時代の変化を背景に、舞台を取り巻く人間模様がつづられている。
「仲蔵という役者については、ある世代までは落語や映画でごぞんじでしょう。親の七光なしに歌舞伎界の頂点に立った人で、今で言うと高倉健さんみたいな男っぽい役者です。踊りの名手で、仲蔵髷(まげ)というヘアスタイルが流行しました。今の歌舞伎から江戸時代の歌舞伎を考えるというのは、コモドオオトカゲを見てティラノザウルスを思い浮かべるようなもので実感がつかみにくいのですが、当時の売れっ子役者というのは、今のテレビのスーパーアイドルのようなものと考えていただいたら、どうでしょうか」
1953年、京都市生まれ。早大大学院で演劇学を学んだ。松竹の演劇制作部に勤務した後、フリーで歌舞伎関係のライターとして活動する一方、武智鉄二氏に師事し、近松座で台本執筆や演出をしていた。歴史・時代小説は昨年刊行された『東洲しゃらくさし』(PHP研究所)に続いて2冊目になる。
下積みからはい上がって来た男が主人公だけに、歌舞伎世界の描写に奥行きがあって、しっと、ねたみ、いやがらせ、いじめ、あるいは人の情け、夫婦愛、師弟の感情などが、丁寧に描かれている。ドロドロとした関係や陰惨な場面も少なくないのに、決して、湿った文章にならず、歯切れよさが一貫している。筋運びがリズミカルだ。熟知している世界を描いているだけに「若い読者に対する歌舞伎世界への招待状」(半村良氏)という選評もあった。
幕末の旗本を主人公にした次作は今秋刊行の予定。今後は、芸道の世界を描くとともに、庶民を登場させながら歴史のうねりに触れるような小説も書きたいという。【重里徹也】
980413110
無
539
[憂楽帳]新聞記事とは
ジュネーブで、毎日目を通す仏語新聞の記事のスタイルに当惑している。日本の新聞と違い、事実を報じるニュース記事でも、記者が直接「主観」をぶつけてくることが多いのだ。事実関係は後回しなのである。
例えば過日、仏の新聞に載った裁判記事の書き出し。「窮鼠(きゅうそ)、猫をかむ。東洋のこの言い回しが、裁判初日を象徴していた」。解説記事や現場の状況記事なら、わかる。が、ニュース記事なのだ。私なら「〇〇事件裁判初日の〇日、〇〇被告は〇〇と検察に反論した」と始めるところだ。
駆け出し時代から、ニュース記事はできるだけ客観的に書け、と教育されてきた。いつ、どこで、だれが……を淡々と書く。そこでは記者の論評より、事実の正確さが優先された。それだけに、仏語紙の書き方に閉口したのだ。
が、知人の仏人記者の意見は全く違っていた。記事は情報の羅列に終わるべきではない。社会現象を記者がどう見て、どう結論したか、それが重要だ、という。「記者の顔が見える記事でないと読者に受けない」というのだ。
確かに、日本のニュース記事は情報が手っ取り早く分かる半面、記者の個性が見えない。欧州は個性を尊重し、多様性を認める社会でもある。文化の違いが、記事に影響している、というのは言い過ぎだろうか。【福原直樹】
980422309
無
188
親と子の歌舞伎鑑賞会
5月24日(日)歌舞伎座昼の部(11時開演「外郎売」「御存鈴ケ森」「素襖落」「野晒悟助」)の3階席を親と子(18歳未満)の組み合わせに限り、1人2400円(通常4200円)で提供する。希望者は往復はがきに〒住所、氏名、年齢、電話番号、枚数を記入、5月12日までに〒104―8077中央区銀座5の1の7、都民劇場「親と子の歌舞伎」係へ。問い合わせは03・3572・4311へ。
980506054
有
319
北欧で初、ストックホルムで歌舞伎公演
ストックホルムで開催中の「第6回EU・ジャパンフェスト」で6月2日から3日間、中村勘九郎らが歌舞伎公演を行う。北欧での歌舞伎公演はこれが初めてで、笛と太鼓の演奏「龍虎」、舞踊の「乱」「連獅子」の3演目が上演される。
海外での歌舞伎公演はストックホルムでちょうど100都市目になる。「乱」は勘九郎の長男の勘太郎、「連獅子」は勘九郎の親獅子=写真、二男の七之助の子獅子、片岡十蔵、亀蔵の僧という配役。
勘九郎は1979年のワシントン公演で亡父の勘三郎の親獅子で「連獅子」の子獅子を踊った経験がある。「父と私の思い出深い『連獅子』を息子と一緒に務められるのは非常にうれしい」と話している。ストックホルム市立劇場で3日間で4回公演される予定だ。
980509046
無
666
[NIE・教育に新聞を]東京・竹早高国語科 山田一郎教諭(42)/2
◇スクラップ作りで「読む習慣」育てる
新聞記事は5W1Hなどの最重要項目が文頭にある、と生徒に繰り返し説明しても、生徒自身が新聞を読む習慣を身に着けなければ、「国語表現」の実力にはつながっていかないだろう。
新聞を継続して読ませるには生徒にスクラップ作りをさせるのが効果的だと思う。わら半紙に日付や第何面何欄に載っていたかなどを明記させ、切り抜いた新聞記事をのり付けさせる。片側には原稿の升目を引いておき、記事の要旨や生徒自身の意見を文章にさせる。
今年度の3年生には、1学期中に5回どんな新聞のどの面でもよいから、自分の進路に関する記事や興味、関心を持った記事を切り抜かせる課題を出した。記事中の5W1Hには赤鉛筆でマークさせ、要旨は80〜100字、意見は400字以内でまとめさせる。
回数や字数は生徒のレベルに合わせ抵抗感がない量にすべきだろう。最近は自分の意見を書くことに慣れていない生徒も多い。まずは生徒にスクラップ作りを続けさせることが重要である。
切り抜く記事は生徒に自由に選ばせればいい。ただ3年生は入試を念頭に置き、進路に関連するテーマを一つ設定させ、それに沿った記事をスクラップさせるのもよい。
選ぶのはスポーツや芸能記事でも構わないが、5W1Hがはっきりした記事の方が自分の意見を書きやすい、という助言はしておきたい。教員は「読書や旅は無形のストック。後で必ず生きてくる」と励ましながら、生徒に新聞スクラップ作りを続けさせたい。
次回は興味を持った記事を生徒が「調べる」ことについて考える。【聞き手・福沢光一】
980518282
無
197
親と子の歌舞伎鑑賞会のお知らせ
◇親と子の歌舞伎鑑賞会
6月21日(日)歌舞伎座昼の部(11時開演「薫樹累物語」「金閣寺」「藤娘」)の3階席を親と子(18歳未満)の組み合わせに限り、1人2400円(通常4200円)で提供する。希望者は往復はがきに、郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号、枚数を記入、6月9日までに〒104―0061中央区銀座5の1の7、都民劇場「親と子の歌舞伎」係へ。問い合わせは03・3572・8077へ。
980520334
有
870
歌舞伎を題材に作品に深み−−三島賞の小林恭二氏
第11回三島由紀夫賞は小林恭二氏の「カブキの日」(『群像』4月号)に決まった。“ポストモダン文学の旗手”の一人と目された小林氏もデビューして14年。今作は歌舞伎という広がりのある題材を得て、作品に深みをもたらしたのが高く評価される理由になった。
小林氏は1957年、兵庫県西宮市生まれ。東大文学部美学科卒。84年に、“電話の使徒”として孤独な現代人を救済する人物たちを描いた「電話男」で海燕新人賞を受賞してデビュー。小説が主人公の不思議な作品『小説伝』や成長していく遊園地の話『ゼウスガーデン衰亡史』などで知られる。
意表を突く発想、テレビゲームのような場面展開、対象の戯画化や寓話(ぐうわ)化、自在な文体の変化などから、高橋源一郎、島田雅彦両氏らとともに、ポストモダン的な文学傾向を代表する作家として注目されたが、これまで賞には恵まれなかった。
「カブキの日」は460枚の長編。戦後、歌舞伎ならぬ「カブキ」が唯一の娯楽になった架空の日本を舞台に、「世界座」という大劇場における顔見せ興行の一日を描いている。
少女と少年が「世界座」の3階にある迷宮のような空間を冒険する物語が繰り広げられる一方、カブキの歴史がたどられ、カブキ界をめぐる門閥争いが語られる。奇想天外な発想と遊戯するような展開は小林氏ならではのものだが、日本の伝統芸能を描いて、作品世界がより充実したものになった。
選考委員の筒井康隆氏は「小林氏以外には書けない小説。歌舞伎をテーマに日本人の精神世界に食い込んでいる。迷宮を彷徨(ほうこう)する場面は胎内巡りの趣向で、日本人の無意識を表現している」と称賛した。
俳句や茶道にもくわしい小林氏は「歌舞伎も含め、すべて日本人の美意識の表現で、地下茎でつながっている。ポストモダンがもてはやされたのはバブルの時代で、よく言えば実験的、悪く言えば、浮薄な面もあった。クラシカルなものによって、ポストモダン的な浮薄さを一掃できると思ったのはこの3年間ぐらいです」と語っていた。【重里徹也】
■写真説明 喜びの小林恭二氏(撮影・近藤卓資)
980521183
有
1187
[メディアを読む]新聞 記者の「切実さ」こそが未来=玉木明氏
もはや、新聞記事は通り一遍の情報を伝えるだけでは、読者に読んでもらえないのではないか。そして、ありきたりの良識や常識に依拠した論理では、読者も納得しないのではないか。読者はそれを超えた記事を求めているはずだ。そういう気がしてならない。これは理屈ではなく、私の実感である。
その意味でいえば、毎週一つのテーマを決めて、その問題点をえぐり出す朝日新聞(朝刊)の連載「どうする/あなたなら……」は、読みごたえがあった。なかでも反響が大きかったのは、「出生前診断」を扱った記事だったようだ。「お手紙は700通近くに達した」(7日)とある。それだけ出生前診断が深刻な問題をはらんでいるからにちがいない。
これは妊婦の羊水検査をして、主にダウン症の赤ちゃんが生まれてくる可能性を診断するものだが、その検査の結果いかんによっては、親は「産むべきか、産まざるべきか」の決断を迫られることになる。そして、どちらを選択しても、親は大きな精神的負担を抱えて、悩むことになる。
こういう問題には、正解というものがない。良識も常識も通用しない。個々の親の倫理観、医療のあり方、さらには障害児をとりまく社会のあり方までが問われているのだ。それを生半可な気持ちで取材し、記事にすれば、記者のほうがはじき飛ばされてしまうだろう。この記事を担当した記者の一人は、7日付同記事で次のように書いている。
「絶望の底から叫び声を上げているような手紙もありました。また、抗議や批判も受けました。『書かなかった方がよかったのかもしれない』と思ったこともあります。しかし、いま、七百通りの苦しみや悩みを目の前にする時、『この問題からは、もう逃れられない』というのが、正直な私の気持ちです」
かつて、この記者は「わたしの子どもは脳性マヒです」(4月1日)と書いてもいた。この記者のその「切実さ」こそ、この記事の生命だといっていい。こういう記事を読むと、「新聞記事もここまできたのか」とついうれしくなり、応援したい気持ちになる。
前にも一度触れたことがあるが、毎日新聞(朝刊)の「家族の伝言」も、記者の「切実さ」を前面に出した画期的な連載である。そのなかで、次のような心を打つ文章を見つけたので、紹介しておこう。
「『私の家はメチャメチャです。両親が2人ともいなくなったからです』。小学校5年生の女の子が書いた作文を読んだ時、『かつての僕と同じだ』と目頭が熱くなった。憤りを抑えることができなかった」(16日)
なかには、「これが新聞記事の文章か」と首を傾(かし)げる人もいるかもしれない。が、これも新聞記事の文章なのだ。記者の切実な気持ちは、読者の切実な気持ちに通ずる。読者の「切実さ」に対しては、記者の「切実さ」をもって応えるしかあるまい。そこからしか、新聞の未来も見えてこないような気がする。(フリージャーナリスト)
980615012
有
377
[人模様]韓国の舞姫、東京公演=舞踊家・チェ・バンジャさん
2002年のワールドカップサッカー日韓共同開催を記念して韓国国立舞踊団が6月27日夕、東京・日比谷公会堂で東京公演(韓国国立劇場・日本サムスン株式会社・韓国舞踊協会東京支部主催、毎日新聞社など後援)を行う。公演は1970年の大阪万博以来、28年ぶり2回目。このおぜん立てをしたのが韓国有数の舞踊家・チェ・バンジャさん=写真。同協会東京支部長でもあるチェさんは同公演で自ら舞う。
慶尚南道泗川出身。82年に来日。今回の公演では散調と呼ばれる高度なテクニックと表現が要求される踊りを披露する。
5歳から韓国古典舞踊を始めた。韓国舞踊界でトップの座を守り続けており、在日同胞にも踊りを教え、“舞姫”として尊敬されている。チェさんは「レベルの高い韓国舞踊の神随を日本の皆さんにお見せしたい。あわせて韓日の文化交流の一助になれば……」と話している。【大漉実知朗】
980624364
有
192
親と子の歌舞伎鑑賞会を提供−−都民劇場「親と子の歌舞伎」
7月26日(日)歌舞伎座昼の部(11時開演「義経千本桜」序幕・堀川御所から三幕目・道行初音旅まで)の3階席を親と子(18歳未満)の組み合わせに限り、1人2400円(通常4200円)で提供する。希望者は往復はがきに〒住所、氏名、年齢、電話番号、枚数を記入、7月13日までに〒104―8077中央区銀座5の1の7、都民劇場「親と子の歌舞伎」係へ。問い合わせは03・3572・4311へ。
980626461
有
1800
7月の舞台 【大阪】
《大阪松竹座》◆「七月大歌舞伎」=2〜26日。昼の部(11時)「傾城反魂香」「近江のお兼」「尾上辰之助・尾上菊之助襲名披露口上」「弁天娘女男白浪」▽夜の部(16時)「梶原平三誉石切」「勧進帳」「権三と助十」。(06・214・2200)
《南座》◆山本陽子「付き馬屋おえん〜恋は未練よ紅牡丹〜」=3〜27日。昼、夜の部あり。(06・214・2200)
《国立文楽劇場》◆文楽夏休み公演=18日〜8月10日。第1部(11時)「大江山の鬼退治」▽第2部(14時半)「生写朝顔話」▽第3部(18時)「夫婦善哉」「小鍛冶」。(06・212・1122)
《劇場飛天》◆ミュージカル「王様と私」=5〜30日。昼、夜の部あり。(06・377・7777)
《シアター・ドラマシティ》◆ケン・ヒル版ミュージカル「オペラ座の怪人」=2〜12日。◆ミュージカル「ロマンス・ロマンス」=22〜26日。(06・377・7777)
《新歌舞伎座》◆浜木綿子「真室川の女」=1〜27日。昼、夜の部あり。(06・631・2222)
《中座》◆三門忠司公演=3〜5日。◆片桐光洋公演=10、11日。(06・214・2200)
《フェスティバルホール》◆モーリス・ベジャールバレエ団「バレエ・フォー・ライフ」=13日。◆松山バレエ団「新白鳥の湖」=21日。◆「ルグリ、ルディエールと輝ける仲間たち」=31日。(06・231・2221)
《近鉄劇場》◆「王女メディア」=2〜30日。(06・773・8400)
《近鉄小劇場》◆東京乾電池公演「風立ちぬ」=6〜8日。◆「唇からナイフ」=11、12日。◆「熊谷突撃商店」=13、14日。◆加藤健一事務所公演「トーチソングトリロジー」=17〜20日。(06・771・1009)
《近鉄アート館》◆「笑の大学」=8〜20日。◆狂言会「伝統の現在8」=27〜29日。(06・625・2222)
《新神戸オリエンタル劇場》◆演劇集団キャラメルボックス公演「さよならノーチラス号」=8〜19日。(078・291・9999)
《京阪神労演》◆劇団民芸公演「根岸庵律女」=9〜11日、大阪・森ノ宮ピロティホール。(06・202・5925)▽12〜14日、京都会館第2ホール。(075・231・3730)▽17〜19日、神戸文化ホール。(078・222・8651)
《扇町ミュージアムスクエア》◆遊気舎公演「タッチャブルズ」=10〜22日。◆新宿梁山泊公演「夜の一族」=25、26日。
(06・361・0088)
《尼崎・ピッコロシアター》◆劇団民芸公演「アンネの日記」=16日。◆文学座アトリエ公演「みみず」=22日。(06・426・1940)
《伊丹・アイホール》◆西田シャトナー東京冒険劇団「ジャム」=23〜27日。(0727・82・2000)
《神戸アートビレッジセンター》◆劇団赤鬼公演「シリウスに向かって撃て!」=17〜20日。(078・512・5500)
《大阪・ウイングフィールド》◆「第9回高校演劇祭OSAKA・夏」=21〜28日。(06・211・8427)
《スペース・イサン東福寺》◆創造集団アノニム公演「髪をかきあげる」=25、26日。(075・531・4266)
《MBS劇場》◆劇団四季ミュージカル「ドリーミング」=20日まで。(0120・489444)
《宝塚大劇場》◆星組公演=8月3日まで。「皇帝」「ヘミングウェイ・レヴュー」。(0797・85・6272)
《宝塚バウホール》◆月組公演「永遠物語」=30日〜8月9日。(0797・85・6272)
「勧進帳」で弁慶を演じる尾上辰之助「王女メディア」の平幹二朗(宮内勝撮影)
980702310
有
487
人形劇の結城座、初のテント公演−−東京・新宿の花園神社境内
糸あやつり人形芝居の結城座が、3日から11日まで(7日のみ休演)東京・新宿の花園神社境内で初のテント公演を行う。川村毅の作・演出による「魔界放浪記」=写真=だ。
川村は、劇作家・演出家で劇団第三エロチカ代表。結城座には2年前に書き下ろし演出で「フランケンシュタインバイブル」を上演しており、今回が2作目となる。結城座と構想を固めるうち、内容にふさわしく新宿の騒音に囲まれたテントでの公演が決まった。
江戸時代を舞台に、冷淡な米商人の一蔵、彼に思いを寄せるおはる、世の決まりごとに反抗心を持つ一蔵の兄吉蔵の3人を軸に物語は展開していく。川村の作品らしく、妖怪(ようかい)に育てられて半分は人間で半分は妖怪という男が登場するなど、テント公演に似合う異形のキャラクターも登場する。
結城座は、寛永12(1635)年に初代結城孫三郎が江戸に座を開設した。10代目孫三郎だった結城雪斎は、昨年末に死去したが、結城座はあえて追悼公演をせず、雪斎が長年の夢としていたテント公演を行うことで、彼の尽きることのなかった人形芝居への意欲に応えたい考えだ。問い合わせは042・322・9750。
980704273
有
491
<インフォメーション>あれにもこれにも
1996年、初のワールドツアーで来日したディープ・フォレスト=写真<左><下>。9カ国からなる10人のミュージシャンを従えて行われたこの公演では、声の美しさに心を奪われた。楽器との調和、そこにいる人との一体感。何ともいえない体験だった。今回はどのような声とサウンドが用意されているのかわくわくする。
先週アーティストでも取り上げたフランスのアコーディオン奏者、マルセル・アゾーラ=写真<右><上>=の公演がある。アコーディオンの名手5人と共に“スーパー・アコーディオン”と題し、クラシックからスタンダード、シャンソン、ジャズなどを演奏する。“パリ祭り・心の詩”にも出演。渡辺貞夫=写真=<右><下>が毎年プロデュースしているKIRIN THE CLUB。ボサノヴァ誕生40周年の今年は、ブラジリアン・ミュージックの女王ガル・コスタを最終公演に迎える。そして昨年はエリック・クラプトンの来日公演に参加したピアニスト、ジョー・サンプルがレイラ・ハサウェイと共演。パワー・メタルのブラインド・ガーディアンは3年ぶりの来日。Epoは2年ぶりのコンサート。夏の風物詩TUBE。と続く。【藤】
980706266
有
486
[月曜サロン]世界へ歌舞伎発信 市村萬次郎の「外国人のための歌舞伎教室」
歌舞伎女形、市村萬次郎=写真左=のライフワーク「外国人のための歌舞伎教室」が8月18、19日午後1、5時の計4回、芝メルパルク大ホールで上演される。演目は「重の井子別れ」と新作舞踊「花木蘭」で、英語、スペイン語などで歌舞伎の見方の解説もある。19日昼の部はインターネットで英語解説付きのライブ中継をし、全世界へ歌舞伎公演を発信するのも話題だ。
「重の井」は萬次郎の重の井、長男竹松の三吉、二男光の調姫の配役。「花木蘭」は国の窮地を救うため男装して戦った中国の英雄的女性ムーラン(萬次郎)が主人公で、その思いを寄せるフ・イェンユイを中村梅玉=同右=が演じる。振り付けは藤間勘十郎で京劇の要素を取り入れたものになる。今秋には同じ題材をアニメ化したディズニー映画「ムーラン」も公開される予定だ。
萬次郎は「新しい物を作ることが、古典を残すためのエネルギーにもなる。少しでも多くの方に歌舞伎を通して日本を知っていただけたらと思います」。また梅玉は「京劇を歌舞伎風にアレンジすることにも意味があります。新しい歌舞伎舞踊にしたい」と話している。問い合わせは03・5420・4520。
980713345
無
184
[選挙]98参院選 両国関係は継続−−参院選の結果に関連し、米国連大使
【ワシントン12日岸本正人】リチャードソン米国連大使は12日、CNNテレビに出演し、参院選の結果に関連して「米国と日本は特別な関係、安全保障面でも政治的、経済的にも極めて強固な関係にあり、その関係は継続している」と語り、選挙結果に関係なく両国関係は変わらないとの見方を強調した。参院選が自民党から野党への政権交代を伴うものでないことを踏まえて発言したものとみられる。
980722361
無
185
親と子の歌舞伎鑑賞会
8月23日(日)歌舞伎座昼の部(11時開演「小栗栖の長兵衛」「棒しばり」「源氏店」)の3階席を親と子(18歳未満)の組み合わせに限り、1人1800円(通常3150円)で提供する。希望者は往復はがきに〒住所、氏名、年齢、電話番号、枚数を記入、8月10日までに〒104―8077中央区銀座5の1の7、都民劇場「親と子の歌舞伎」係へ。問い合わせは03・3572・4311へ。
980812173
無
454
歌舞伎の自主公演チケット返して! 市村萬次郎さんの弟子らが紛失−−JR立川駅
◇弟子らが1500枚紛失
歌舞伎役者の市村萬次郎=本名・徳昭=さん(48)が、11日毎年恒例にしている自主公演のチケット1500枚(約1400万円分)を紛失し、「間違って持っていったのなら返して」と呼び掛けている。
紛失したのは同日午後0時50分ごろ。市村さんの妻潔子さん(36)と弟子ら3人がJR立川駅で、青梅線から中央線に電車を乗り換えようとした際、青梅線の5両目の網棚にチケットの入った紙袋を置き忘れた。気付いて5分ほどたって網棚を見た時には既になくなっていたという。
紙袋は白と黒に染められ、中にはビニール袋に包んだ公演のチケット1500枚とチケットの売り上げ2万円が入っていた。
公演は「外国人のための歌舞伎教室」と題して市村さんが6年前から続けている。今年は18、19日に東京都港区芝のメルパルクホールを会場に「重の井」「花木蘭」などを上演する予定。
チケットの番号などは把握しており、「間違ったチケットを買わないで」と注意を促している。市村さんの連絡先は03・5420・4520。【勝田友巳】
980816167
有
1027
[まわり舞台]外国人向けに自主公演=水落潔 (日曜くらぶ)
8月は歌舞伎俳優の自主公演の盛んな月である。今年もすでに「宗十郎の会」「笑三郎の会」が行われ、この後も「市川右近の会」(16日、国立劇場)、市村萬次郎の「外国人の為の歌舞伎教室」(18、19日、芝メルパルクホール)、「葉月会」(20日、国立劇場)、「桜梅会」(22、23日、スペース・ゼロ)、市川團十郎の「鶴賀松千歳泰平」公演(27〜29日、歌舞伎座)と目白押しである。
この自主公演にもさまざまなねらいがあって、「市川右近の会」は大役への挑戦、「桜梅会」はわき役たちの勉強会、「葉月会」はベテラン女形の中村歌江を中心にした珍しい狂言の復活、團十郎の「鶴賀松千歳泰平」は、新作歌舞伎「上意討ち」を義太夫歌舞伎に仕立て直して演じる実験公演の性格を持っている。
中でもユニークなのは「外国人の為の歌舞伎教室」で、主として在日の外国人を対象に萬次郎が1992年から始めた歌舞伎教室である。
萬次郎によると「歌舞伎の外国公演に参加して、歌舞伎が外国でも歓迎される演劇だと確信した。一方、外国に歌舞伎を持っていくには大変な経費がかかる。それなら在日の外国人たちに、比較的安い料金で歌舞伎を見てもらう機会を作るのも、意義のある仕事ではないかと思って」この教室を企画したという。毎回日本語のほかに外国語での解説をしており、今年は英語とスペイン語の解説をつけるそうだ。
最初に萬次郎自身が登場、男が女形に変身する化粧の過程を見せ、その後古典の「重の井子別れ」、新作舞踊「花木蘭」を上演する。
自主公演は短期間の公演だから経費の捻出(ねんしゅつ)と観客動員が大変だ。どの俳優もファンクラブや後援会をはじめ、さまざまなつてを求めて観客動員をはかっている。「外国人の為の歌舞伎教室」の場合は、萬次郎夫人の潔子さんがポスターを持って各国大使館を走り回っている。歌舞伎に理解のある国はいいが、中にはまったく知らない国もあるそうで、萬次郎の女形のポスターの写真を見せて「これが夫だ」と言ったところ「お前はレスビアンか?」とびっくりされたこともあったそうだ。また応対に出た大使館員が「どうぞ、お通りなすって」「御免なすって」と、変な日本語を使うので「どこでお習いになったのです」と尋ねたところ、テレビの「水戸黄門」と「暴れん坊将軍」で日本語を勉強したと答えたそうだ。黄門様の効用は葵(あおい)の紋の印篭(いんろう)だけではないのである。(演劇評論家)
■写真説明 「花〓」の萬次郎の〓
980820316
無
193
親と子の歌舞伎鑑賞会
9月20日(日)歌舞伎座昼の部(11時開演「菊」「二条城の清正」「身替りお俊」「二月堂」)の3階席を親と子(18歳未満)の組み合わせに限り、1人2400円(通常4200円)で提供する。希望者は往復はがきに、郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号、枚数を記入、9月10日までに〒104―8077中央区銀座5の1の7、都民劇場「親と子の歌舞伎」係へ。問い合わせは03・3572・4311へ。
980824235
有
510
企画・製作者も出演 青年座のスタジオ公演「こもれびの中で」
青年座がスタジオ公演として、9月2日から6日まで東京・代々木八幡の青年座劇場で「こもれびの中で」(西沢周市作・磯村純演出)を上演する。
スタジオ公演の楽しさは、まず青年座の若手が伸び伸びと活躍すること。さらに、意外な作者の実験的な作品に触れることができる。今回の作者・西沢は、北区つかこうへい劇団の主任演出家なのである。
粗筋はこうだ。高校時代のバスケット部のメンバーが、同窓会を開いた。10年前、キャプテン相馬がアキレスけんを切り、補欠の篠宮が起用されたが、一時しのぎと思われていることに篠宮は反発、チームを裏切って試合を放棄した。高校最後の公式戦、相馬は無理を押して出場し、再起不能となった。同窓会にも、相馬の姿はない……。
作者・西沢は、現役の高校教師でもある。「近ごろ、高校の部活動の人気がない」と嘆く。西沢が描く世界は、運動部のサクセスストーリーではない。お互いの弱さや醜さを含めて、人と人との深いつながりのある部活動の魅力を描く。
この公演を企画・製作(経済的・芸術的な全責任をすべて負う)した3人が、出演もする。紹介しよう。写真左から五十嵐明、野々村のん、青羽剛。
問い合わせは03・5478・8571。
980828389
有
1920
9月の舞台 【大阪】
《大阪松竹座》◆スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」=5日〜10月27日。昼、夜の部あり。(06・214・2200)
《南座》◆上方大歌舞伎=5〜27日。昼、夜の部あり。「壷坂霊験記」「道行旅路の嫁入」「宿無団七時雨傘」。(06・214・2200)
《国立文楽劇場》◆劇団若獅子公演=9、10日。「国定忠治」「おたふく物語」。◆「女流邦楽鑑賞会」=26日。(06・212・1122)
《劇場飛天》◆「おしん<青春篇>」=1〜27日。昼、夜の部あり。(06・377・7777)
《シアター・ドラマシティ》◆「寝盗られ宗介’98〜徳川六代将軍・家宣の若き日の恋〜」=5〜23日。(06・377・7777)
《新歌舞伎座》◆杉良太郎公演=2〜27日。昼の部(11時)「拝領妻始末」「’98/秋オンステージ」▽夜の部(16時)「旅鴉半次郎 ふりむけば夕陽」「’98/秋オンステージ」。15日から昼夜演目入れ替え。(06・631・2222)
《中座》◆前進座公演「たいこどんどん」=3〜20日。(06・631・3273)
《びわ湖ホール》◆「オープニング・ガラ」=5日。オペラ「湖上の美人」、バレエ「新『白鳥の湖』」、オペレッタ「こうもり」。(077・523・7136)
《近鉄劇場》◆STEPSミュージカル「0/30遥かなる時空を超えて」=3日。◆サインダンスミュージカル「オズの魔法つかい」=5、6日。(06・771・1009)
《近鉄小劇場》◆どんちょう会公演「だんじりの佐吉」=11〜15日。(06・782・0869)◆カメレオン会議公演「たしあたま」=18〜20日。(06・771・1009)
《新神戸オリエンタル劇場》◆演劇集団キャラメルボックス公演「ケンジ先生」=10〜13日。◆ひょうご舞台芸術「陽ざかりの女たち」=19〜30日。(078・291・9999)
《京都労演》◆テアトル・エコー公演「馬かける男たち」=(8月30日〜)1日まで、京都会館第2ホール。(075・231・3730)
《大阪労演》◆中西和久ひとり芝居「山椒大夫考」=18、19日、大阪・エルシアター。(06・202・5925)
《神戸労演》◆秋田雨雀・土方与志記念青年劇場公演「愛が聞こえます」=19、20、22日、神戸文化ホール。(078・222・8651)
《扇町ミュージアムスクエア》◆転球劇場公演「穴」=4〜6日。◆劇団199Q太陽族公演「それを夢と知らない」=11〜13日。(06・361・0088)
《尼崎・ピッコロシアター》◆「楽劇・女どん底」=4〜6日。
◆劇団扉座公演「三好家の引っ越し」=25日。(06・426・1940)
《伊丹・アイホール》◆劇団ファントマ公演「戦闘鬼」=24〜28日。(0727・82・2000)
《神戸アートビレッジセンター》◆劇団満遊戯賊公演「レリカリー キューブ」=11〜13日。(078・512・5500)
《大阪・ウイングフィールド》◆SHIROGANEプロジェクト公演「プロムナード」=19、20日。(06・211・8427)
《京都府立文化芸術会館》◆劇団M・O・P公演「夏のランナー」=16〜18日。(075・222・1046)
《MBS劇場》◆劇団四季ミュージカル「アスペクツ オブ ラブ」=20日まで。(0120・489444)
《宝塚大劇場》◆雪組公演=14日まで。「浅茅が宿〜秋成幻想〜」「ラヴィール」。◆月組公演=18日〜10月26日。「黒い瞳」「ル・ボレロ・ルージュ」。(0797・85・6272)
《宝塚バウホール》◆星組公演「イコンの誘惑」=6日まで。◆宙組公演「バウ・ボヤージュ!」=11〜15日。(0797・85・6272)
■写真説明 スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」の市川猿之助
■写真説明 「おしん<青春篇>」の小林綾子
980829042
無
677
[NIE・教育に新聞を]東京・石神井高校英語科・田嶋英治教諭/5止
◇班単位の作業通じ、英語口頭表現養成
英字新聞を使って英語での口頭表現能力の育成を目標としたNIEも出来る。4時間はほしい。
最初の授業は3〜5人の小グループを作り、実際に同じ英字新聞を与え興味を持った記事を一つ決めさせる。選択は生徒の自主性に任せることが重要。各グループの決定記事は最後にクラスの前で発表するため他のグループには秘密にする。
2、3時間目もグループ活動にする。教師は次の5項目を各グループが選択した記事に関し作業させる。(1)5W1Hを抜き出す(2)不明な単語やイディオムを辞書で調べ、主な用例を書く(3)記事に関する質問を五つ英語で作る(4)記事の要約と意見感想を英文でまとめる(5)日本語らしく訳す。グループ内で協力、議論しながら作業をさせる。
最後はグループごとに発表させる。発表グループは英文の要約文を読み上げ、発表者以外は手元の英字新聞から記事を探す。次に調べた語句を説明した後、作った五つの英文の質問をし、他は記事を読み質問に答える。
正誤の数をグループ単位で競争するのも学習意欲を高める。ただゲーム感覚で終わってはいけない。必ず最後は発表グループが記事の訳を述べ、クラスで議論することが大切。また紙上から論争的な記事を指定し、生徒に賛成、反対の論拠を選び抜かせ発表させるのも効果的だ。
さらに記事をディベートの資料とし活用して読み、自分の意見を書いて発表させたり、相手の意見を聞かせたりして4技能の育成を目指す。英語教育でのNIEの発展的研究をインターネット上のメディアも含め今後も続けたい。=おわり【聞き手・福沢光一】
980830171
有
1014
[まわり舞台]昔の歌舞伎取り戻す試み=水落潔 (日曜くらぶ)
9月にBunkamuraで3回目のコクーン歌舞伎が上演される。今回は勘九郎、福助、橋之助らの出演で、鶴屋南北作、串田和美演出「盟三五大切」を上演する。
この作品は「仮名手本忠臣蔵」の外伝で、「四谷怪談」の後日譚という趣向になっている。赤穂義士の一人の不破数右衛門が深川芸者小万と船頭三五郎の夫婦に百両の金を騙(だま)し取られたため、殺人鬼になる話を綴(つづ)っている。ところが夫婦が騙し取った金は、実は数右衛門に差し出すための金で、三人共本名を隠していたため、互いに分からなかったのである。そこに南北らしい辛い視点がある。
このコクーン歌舞伎がスタートしたのは、1994年だった。歌舞伎座や国立劇場といった現代的な設備を備えた大劇場では出来ない歌舞伎を復活しようという意図で始まった公演で、シアターコクーンの劇場空間を生かして、江戸時代の芝居小屋のような平土間を作り、本物の水や泥を使って、舞台と客席が親密で一体となった芝居作りを試みた。それが若い人たちの関心を呼び、毎回大入りになっている。
今回も回り舞台を設営して、さまざまな演出の工夫を見せるそうである。
芝居という言葉は、もともと芝のある場所の意で、芝生の見物席から出た言葉である。中世の芸能は主として社寺の境内で行われ、観客は芝生の上でそれを見物した。その後、支配層が見物する桟敷が生まれるが、その時は平土間の部分を芝居と呼び大衆席の意味で使われた。近世になって歌舞伎が生まれ、劇場が作られるようになってから、意味が転じて劇場、演劇、演技などを指す言葉になったのである。
明治に入って劇場は近代化の道を進め、現在では各地に立派な劇場やホールが揃(そろ)うようになった。それは歌舞伎を高尚化することに役立ったものの、一方で歌舞伎の持つ卑俗な楽しさ、舞台と客席の一体感を失うことにも繋(つな)がった。
コクーン歌舞伎は、そんな歌舞伎の現状に対して、昔の歌舞伎の面白さを取り戻すねらいを持った公演である。この公演に限らず、猿之助のスペクタクルを重視した演出、鴈治郎の元禄歌舞伎復活を目指した近松座、四国の金丸座の「こんぴら歌舞伎」などは、いずれも現在なくなった歌舞伎の面白さを取り戻すための試みである。
明治以来ひたすら古典化の道を歩んできた歌舞伎が、最近は別の道を模索し始めている。歌舞伎は古くて新しい芝居なのである。(演劇評論家)
■写真説明 舞台けいこをする中村勘九郎
980919026
無
666
[NIE・教育に新聞を]東京・立教小・遠山章夫教諭(39)/3
◇小学生新聞との併読で理解深める
昨年12月、人気アニメ番組「ポケットモンスター」を見ていた子供が頭痛や目まいを訴える事件があった。児童は身近な問題を扱った記事に強い関心を示す。「ポケモン事件」の記事は絶好のNIEの教材になった。
記事中の難しい漢字にルビを振った記事を配った。その上で、幾つか問い掛けた。「朝刊と夕刊の記事の被害者の数を比べよう」「記事から何を考えたか」「記事中で大事だと思うところにマークしてみよう」。普段より児童が記事を読み込む度合いが違っていた。
ただ、小学生が一般紙を読みこなすのは難しい面があるのも確か。そこで、私は小学生新聞を併読紙に使っている。小学生新聞は語句が分かりやすく、ニュースを子供向けに簡潔に書いてある。同じテーマの記事を扱った一般紙と小学生新聞を一緒に渡すことで、児童の理解は一層高まる。
4月のポケモン再開の時は、児童たちに賛成か反対かを聞き、話し合いをさせてみた。「面白いから早く見たい」「被害者のことを考えて、もう少し延期した方がいい」など賛否両論が出た。友達の意見を聞き、「二度と起きないよう規制をして、再開すればよい」と言う児童もいた。
小学生の話し合いのテーマになるものとしては、児童が強い興味を持つ記事のほか、投書欄やコラムが使いやすいのではないだろうか。
自分の意見を相手に伝える。相手の意見をよく聞く。相手の意見を取り入れながら、新たに自分の意見をまとめる――。このような力を身に着けさせるには、活字であり、論理性の高い新聞教材に魅力を感じている。【聞き手・福沢光一】
980925397
有
2100
10月の舞台 【大阪】
《大阪松竹座》◆スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」=27日まで。昼、夜の部あり。(06・214・2200)
《南座》◆大月みやこ公演=2〜27日。昼、夜の部あり。「夫婦善哉」「’98大月みやこ新たなる飛躍」。(06・214・2200)
《国立文楽劇場》◆東西名流舞踊鑑賞会=17日。(06・212・1122)
《劇場飛天》◆細川たかし公演=1〜28日。昼、夜の部あり。
「三代将軍家光青春行状記〜天下の一大事〜」「’98熱唱!細川たかし」。(06・377・7777)
《シアター・ドラマシティ》◆ミュージカル「RENT」=9日〜11月1日。(06・377・7777)
《新歌舞伎座》◆五木ひろし公演=2〜27日。昼、夜の部あり。「笑売繁昌で幸もってこい」「ビッグショー」。(06・631・2222)
《中座》◆「どうとんの女〜それから〜」=9〜11日。◆梅沢武生劇団公演「梅沢富美男 魅力のすべて」=15〜31日。(06・214・2200)
《フェスティバルホール》◆貞松・浜田バレエ団公演「白鳥の湖」=11日。◆ミュージカル「銀河の約束」=28日〜11月1日。(06・231・2221)
《びわ湖ホール》◆「NINAGAWA・マクベス」=24〜31日。(077・523・7136)
《近鉄劇場》◆「こどもの一生」=8〜11日。◆ミュージカル「迷宮伝説」=31日〜11月29日。(06・771・1009)
《近鉄小劇場》◆自転車キンクリートSTORE公演「絢爛とか爛漫とか」=23〜25日。◆柄本劇団公演「定理と法則」=28日〜11月1日。(06・771・1009)
《近鉄アート館》◆劇団クセック・ACT’98「ベルナルダ・アルバの家」=3、4日。◆遊気舎プロデュース「びよ〜ん」=10〜14日。◆白石加代子「百物語」シリーズ=19、20日。(06・625・2222)
《新神戸オリエンタル劇場》◆音楽劇「ハムレット」=9〜18日。◆「愛は謎の変奏曲」=30日〜11月8日。(078・291・9999)
《京阪神労演》◆文学座公演「牛乳屋テヴィエ物語」=16、17日、大阪・ピロティホール。(06・202・5925)〓18、20、21日、神戸文化ホール。(078・222・8651)〓24〜26日、京都会館第2ホール。(075・231・3730)
《扇町ミュージアムスクエア》◆リリパット・アーミー公演「0007マダム・ルージュに愛をこめて」=7〜18日。(06・361・0088)
《尼崎・ピッコロシアター》◆兵庫県立ピッコロ劇団公演「ホクロのある左足」=7〜11日。◆南河内万歳一座公演「ライオン狩り」=23、24日。(06・426・1940)
《伊丹・アイホール》◆青年団プロデュース「新版 小町風伝」=9〜11日。◆劇団プロジェクト・ナビ公演「砂と星のあいだに」=17、18日。(0727・82・2000)
《神戸アートビレッジセンター》◆劇団黒テント公演「ヴォイツェック」=10、11日。(078・512・5500)
《大阪・ウイングフィールド》◆流星倶楽部公演「ほそっちょの月とふんわりの雲」=10、11日。(06・211・8427) 《大阪・南港ふれあい港館野外特設劇場》◆維新派公演「王國」=9〜26日。(06・763・2634)
《京都府立府民ホール・アルティ》◆加藤健一事務所公演「千人のピエロ」=8〜11日。(075・441・1414)
《奈良・あやめ池円型大劇場》◆OSK日本歌劇団公演「薔薇の街のロマンス」=9日〜11月23日。(06・788・3987)
《宝塚大劇場》◆月組公演=26日まで。「黒い瞳」「ル・ボレロ・ルージュ」。◆宙組公演「エリザベート」=30日〜12月20日。(0797・85・6272)
《宝塚バウホール》◆雪組公演「凍てついた明日〜ボニー&クライド〜」=9〜19日。◆花組公演「ENDLESS LOVE」=31日〜11月15日。(0797・85・6272)
■写真説明 「ハムレット」の麻実れい
■写真説明 文学座「牛乳屋テヴィエ物語」の北村和夫(右)と高原駿雄
981004172
有
1086
[悼]松竹副社長、歌舞伎プロデューサー・茂木千佳史氏=9月20日死去・72歳
◇舞台裏で輝き続けた「黒衣」
9月26日に行われた葬儀で、後輩にあたる大川武夫松竹常務は「茂木副社長は歌舞伎の最後の名プロデューサーでした」と弔辞をささげた。その言葉通り、茂木さんは生涯を歌舞伎の裏方に徹し、歌舞伎を縁の下から支えた。
茂木さんは早稲田大学政経学部の出身で、1950年に当時の尾上菊五郎劇団に入り製作経理を担当した。
市村羽左衛門さんは「菊五郎劇団創立直後で、まだ実力はなく苦難を重ねていました。茂木さんはそんな時代に劇団に来て、舞台の表も裏も、俳優のことも勉強したのです。それが後の仕事の上で大きく役立ったと思います」と語る。
54年に松竹に入社、当初は製作経理の仕事をしていたが、69年に菊五郎劇団中心の一座のアメリカ公演に同行、以後製作を担当することになった。
松竹にとって、歌舞伎は芸術財であると共に興行財である。また歌舞伎は俳優中心の演劇として発展してきた歴史を持つ。プロデューサーは、それらの事に目配りしながら、長期的には歌舞伎の将来を見据え、短期的には毎月の座組、演目、配役を決めていかねばならない。歌舞伎そのものの知識はもとより、俳優同士の関係、ファンの好み、観客層の動向を考えながら興行を打っていく。俳優は良い役がしたい。若い観客は派手で有名な演目を望む。長年観(み)てきた観客や研究者は珍しい演目を上演しろと言う。立場によって要求が違うのである。それを調節しながら、多くの劇場の歌舞伎公演を次々と開幕していくのは、並の人では務まらない仕事である。
茂木さんは演劇部門の総帥である永山武臣会長の右腕となって、この仕事を続けていった。地味で根気の要る仕事だったと思うが、茂木さんはいつも穏やかな表情をしていた。俳優に対しては粘り強く説得し、相手が根気負けすることも多かったと聞く。温厚で誠実な人柄が物を言った。
「早稲田学報」という雑誌の「歌舞伎と現代」という座談会に、茂木さんと共に出席したことがある。その時も茂木さんは、一人一人から出る歌舞伎への注文に誠実に答えながらも「歌舞伎をますます発展させていきたいのです」と歌舞伎に賭(か)ける情熱を見せた。
83年から4年間は製作と兼務で歌舞伎座の支配人を務めた。その間に十二代市川團十郎襲名公演を行い、大成功を収めた。黒衣に徹した茂木さんの人生の中で最も華やかな時ではなかったかと思う。
その後茂木さんは松竹衣裳の社長を兼務することになったが、創業40周年の96年に「歌舞伎衣裳」と題した豪華な写真集を刊行した。歌舞伎衣装を網羅した初の本で後世に残る仕事であった。 (演劇評論家・水落潔)
981028169
無
424
[社会部発]「明るい話題」を探してます
最近、「明るい話」が多い。今月半ばから、同僚の出産が2件、結婚と退院が1件ずつ相次いだ。それだけでも、とりわけうれしいということは、逆に考えれば「暗い話」に取り囲まれているからかもしれない。
先月下旬に届いた読者からの電子メールが、ずっと気に掛かっている。8歳の娘に新聞記事を読み聞かせているという母親からだ。
「お願いがあります。読んで、聞いて、心が温かくなるような、ほっとするような記事が必ず載っているコーナーを作っていただきたいのです。一読者のつぶやきですが、聞いていただければありがたいです」
暗い話ばかりを集めて新聞を作っているわけでは、もちろんない。「ほっとするような記事」は載っていると思う。それでも、こんな「つぶやき」が届くのは、世の中の「渇き」を象徴しているように思える。
今、そんなコーナーを作る準備を進めているが、結構難しい。「ほっ」としてもらえるかどうか、心配でもある……。
いけない。話が暗くなってしまった。【中井和久】
981104295
無
208
親と子の歌舞伎鑑賞会
◇親と子の歌舞伎鑑賞会
22日(日)歌舞伎座昼の部(11時開演「種蒔三番叟」「妹背山婦女庭訓・三笠山御殿」「紅葉狩」)の3階席を親と子(18歳未満)の組み合わせに限り、1人2400円(通常4200円)で提供する。希望者は往復はがきに、郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号、枚数を記入、11月12日までに〒104―8077中央区銀座5の1の7、都民劇場「親と子の歌舞伎」係へ。問い合わせは03・3572・4311へ。
981107034
有
615
[NIE・教育に新聞を]東京・荒川商高公民科・太田正行教諭(46)/1
◇経済指標を学んで職安の記事を読む
社会科の教員は、NIEが盛んになる前から授業に新聞を積極的に取り入れてきた。
改まってNIEを考える時、まず「なぜ新聞を授業に使うのか」という点を明確にしておきたい。私自身は新聞記事の選び方によっては教科書以上に新聞は生徒の興味を引き出す教材になり得ると考えている。
その意味では、授業に沿った記事を教員が新聞から探し出せるかどうかが重要になる。教科書の単元通りに適した記事を探すのは案外難しい。
そこで、私は最新の新聞から生徒の関心を引きそうな記事を選んで授業の導入に使い、そこから教科書に立ち返ることにしている。教科書の内容が一部抜け落ちる懸念もあるが、生徒中心の授業を考えると、教科書主体より時事問題主体の授業の方がよいと判断した。
では、どんな記事でテーマを扱い、授業を進めていけばよいのだろう。
教科書には、さまざまな経済指標が盛り込まれているが、最新の統計では新聞が一番。授業例の一つとして、日本の失業率は現在高水準にあり、職業安定所には長蛇の列ができているという記事を生徒に示してみる。
そして、教員は(1)失業率とは何か(2)失業率が高いと社会はどうなるか(3)なぜ高くなったか――などを解説していく。
仕事がなくて困っている人々の姿を報告する記事を読むことで、失業率や景気に対する生徒の関心は高まるだろう。人間の生活が見えてくるのがNIEのよさでもある。【聞き手・福沢光一】
981114028
無
658
[NIE・教育に新聞を]東京・荒川商高公民科・太田正行教諭(46)/2
◇関心持たせ理解を深め分析力を養う
最近の生徒は政治、経済記事に一般的に関心が低い。「つまらない。分からない」と言う。
NIEを実践するならば、教員は生徒の関心を引き出すような記事を探し出したい。韓国大統領来日時の宮中晩さん会の食事内容、プロ野球横浜優勝による経済効果、サッカーくじなど生徒たちに身近な記事を配り、授業に取り入れたい。
ただ、授業は単なる記事紹介に終わってはいけない。まずは生徒にその記事を読んでもらう。そして、その記事に対する要点や意見を文章にまとめさせる。文字にすると、記事内容が頭の中で整理され、理解しやすくなるからだ。
記事のほか、図や表、専門用語の説明、政治漫画なども大切にしたい。漫画などは記事を理解していないと何が面白いのか分からない。記事や資料から物事を総合的に分析する力を養うのにも新聞は適している。
「倫理」でもNIEは実践できる。例えば、クローン牛の誕生や赤ちゃんの出生前診断など「生命倫理」を扱った記事を読ませ、生徒自身の意見を文章にしてもらう。
教員は生徒全員の意見を個条書きにして後日、配布する。同じ教室で学ぶ生徒同士の間でも、さまざまな意見があることを生徒に実感させる。
また、人物に焦点をあてたインタビュー記事を読ませ、人間の生き方を考えさせるのもいい。新聞には生徒が知っている人物がよく出ている。
人間の生き方には、さまざまあって、お互い認め合うことの大切さをNIEを通じて指導し、教科書に登場する哲学者の生き方とも照らし合わせて考えさせたい。
【聞き手・福沢光一】
981125320
無
190
親と子の歌舞伎鑑賞会
12月20日(日)歌舞伎座昼の部(11時開演「碁太平記白石噺」「敵討天下茶屋聚」「蜘蛛の拍子舞」)の3階席を親と子(18歳未満)の組み合わせに限り、1人2400円(通常4200)で提供する。希望者は往復はがきに住所、氏名、年齢、電話番号、枚数を記入、12月8日までに〒104―8077中央区銀座5の1の7、都民劇場「親と子の歌舞伎」係へ。問い合わせは03・3572・4311へ。
981222264
無
144
第27回大谷竹次郎賞に、劇作家・榎本滋民氏
新作歌舞伎の優れた脚本に贈られる第27回大谷竹次郎賞が劇作家の榎本滋民氏に決まった。8月歌舞伎座の成田山新勝寺紀念歌舞伎公演で上演された「鶴賀松千歳泰平」(市川団十郎主演)が平成の義太夫狂言を目指し、歌舞伎の再創造に一石を投じたと評価されたもの。榎本氏には賞金50万円と副賞が贈られる。